聖域。


「にーにー……お邪魔しますですわ。」
叔父様が酔いつぶれて寝静まった真夜中。
私はそっとにーにーの部屋に入る。

「………今日も一日、頑張りましたわ。」
あれ以来あえて窓も開けず掃除もしない部屋は埃っぽかった。
にーにーが帰ってきたら「むぅ……。」って困るかもしれないけど、
でもこの部屋に残ってるにーにーの匂いを消してしまいたくなかったから。
私はなるべく埃をたてないように、静かに座る。

「沙都子は強くなりましたでしょう?ねえ、にーにー……。」
叔父の帰宅で梨花と引き離されて以来、ここでにーにーの匂いに包まれてから
自分の部屋で眠りにつくのが私のささやかな幸せだった。
私に残された、唯一の安らぎの空間だった。

―――それなのに―――!



沙都子ちゃんが学校に来てくれた。
問題は山積みだけど、沙都子ちゃんが笑っていると、レナもみんなも自然に笑顔になる。
いつものように楽しい昼食時。沙都子ちゃんが豹変した――。
「……うぁぅあぅぁぅ……あぁあぁああああぁぁぁぁぁ…っ!!」
圭一くんを拒絶し、恐怖に顔を歪ませてただ怯えていた。
「…大丈夫だよ沙都子ちゃん、もう怖いことなんかないよ…!ほら、…安心して!」
痛々しい姿の沙都子ちゃんをそっと抱き締め、その背中を優しく撫でる。
「……ぅああうぅあぅうぅ………あぅ………っ、」
「沙都子ちゃん、……何があったのか話してもらえるかな?」
私の腕の中で少しだけ落ち着きを取り戻してくれた沙都子ちゃんに優しく問いかける。
「うう……っ。…おじさまが……叔父様が、にーにーの部屋に入ったんですの…!
 さんざん踏み荒らして、物を引っかきまわして、にーにーの匂いを消してしまったんですの…!」
「………………っ!!」
沙都子ちゃん……っ!!
「私に残されたたったひとつの場所でしたのに、もうにーにーの匂いはしないんですの…。」
きっと沙都子ちゃんは必死で抵抗しただろう。
けれど小さな身体ではどうにもならず、頭を鷲掴みにされて、放り出されたに違いない。
だからあんなに圭一くんの手を拒んだんだ――。
「にーにーの優しい匂いが、叔父様の…….あの男の酒臭い気持ち悪い臭いで汚されたんですの……っ!」
沙都子ちゃんの悲痛な告白に、圭一くんも魅ぃちゃんも梨花ちゃんも怒りと哀しさに顔を歪ませている。
「………けて………。」
「………え?」
「私を助けて…っ!あの男を私の前から排除して………っ!
 もう失うものはありませんの、私にはもうみなさんしか残っていないんですのっ!
 お願い…レナさんっ、圭一さん、魅音さん………梨花あぁ………っ!」
「沙都子………!――わかりましたです。ボクもできる限りのことをしますです。――もう後悔は、したくないから。」
「わかった。オレは沙都子の望むようにするよ。」
「園崎の力を使わなくても、できる方法はきっとあるはずだからね。」
「よく言えたね。――わかったよ沙都子ちゃん。」
遠巻きに見ていたクラスメイトたちも、騒ぎに飛び込んでいた知恵先生も、沙都子ちゃんを優しく見つめている。

大丈夫。レナも沙都子ちゃんのために頑張るよ。
――居場所を汚される悔しさ、レナにはよくわかるから。








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