〜白と黒〜


どうせなくなるのなら、
はじめから何もない方がいい。
どうせなくなるなら、
せめてそれまでを大切にしたい。

「その時」が近付くたびに、
「その時」を繰り返すたびに、

白と黒。黒と白。
私の中のふたつの心が揺れ動く。


コーヒーをかき混ぜて、その上からミルクを注ぐ。
ぐるぐるとうずを巻いて溶け込んでゆく、
黒と白。白と黒。


誰もいない、夜の川。
真っ暗な世界の中、白い裸身を水に浸す。
綺麗なはずの水面は、闇にまみれて汚水にも見える。
清められているのか、穢されているのか。
白と黒。黒と白。


私はもうすぐ、殺される。
白い裸身に黒い髪、それに彩を添えるように臓物と血を撒き散らして。
「その時」のために身を清めているのか、
「その時」の前に自ら汚れてやるのか、
自分でもよくわからない――。
黒と白。白と黒。


「シマウマの縞は、黒地に白ですか?白地に黒ですか?」
「うわ、何だよそれっ!?……ちくしょー、気になるなーおいっ。」
「梨花ちゃんって、時々わかんないよねぇ……黒地に白……いや、白地に黒っ!?」
「……レナもわからないよぉ〜……。」
「ちょっと待ってくださいませ……昔テレビで聞いたような気もするんですのよ…っ?」
昼休み。食後の何気ない一言に、本気で悩むみんな。
………そう、彼らはいつも「本気」で「全力」なのだ。
諦めて投げやりになっている私をいつも勇気付けてくれる。


「あーーーもうダメだああぁあっ!!」
放課後、真っ先に弱音を吐いた圭一に続き、みんなも降参してきた。
「これじゃ部活に気合入れられないしね。素直に教えを請うのも大事だよ。
 ……うーーーー、でも悔しいなあ……。」
「うん、2択だからって適当に答えられないもんね。」
「梨花ぁ〜。一体どっちが正しいんですのっ!?」
「………どっちだったかは、ボクも覚えてないのですよ☆」
「「「「えぇえええぇぇぇえええええええ〜〜〜っっ!!??」」」」
「――どっちにしてもたいした違いはないのですよ☆」
私は「にぱ〜☆」といつものように笑う。
「黒地に白でも、白地に黒でも、シマウマさんはシマウマさんなのです。」
「まー、そりゃそうだろうけどさー……。」
「気になって眠れませんわー!」
「こーなったら、部活中止にして、図書館行って調べようか?」
「うんうん、どっちかなぁ〜。どっちでもすっごくかぁいいよねぇ〜☆」
「――みんなに不可解な謎のおすそ分けなのですよ☆」

たとえボクがいなくなっても、こんな変なこと言ってたなぁって、
時々思い出してくれればそれでいい。
黒地に白でも、白地に黒でも。
悩んで騒いで調べてまた騒いだ想い出ができることに変わりはないから。

白と黒。黒と白。
どっちもボクで、私。








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