幸せな光景。


「――さあ、待ちに待ったお昼の時間だよお!はい、机合わせてー。」
ガタガタガタっ。
毎日恒例の楽しい昼食。男一人に女五人という一見不思議なグループだが、ここ雛見沢では違和感はまったくない。
「レナ、今日は何作ってきたんだ?」
「うん、今日はそぼろご飯だよ。……だよ。」
おずおずと差し出された重箱にみんなでむらがる。今日もやっぱり美味そうだ。
「――お、やるねレナ。……うん、卵とそぼろと紅しょうがと絹さやのバランスが絶妙だね!」
「見た目だけじゃなくって味も絶品ですからねー。負けられませんよお姉。」
「うー…そーゆー詩音はどーなのよ。…あ!冷凍食品ばっかじゃん〜!手抜きだ手抜きっ!」
「合理的と言ってくださいね。興宮から毎日ここまで通ってるんですから、時間を無駄にしたくないんです。
 それにちゃんと、美味しいメーカーのを選んでるんですからね。」
「……確かに美味しいな。」
「うん、レナも大好きな種類だよ。」
「結構高いメーカーのようですわねえ…。」
「時間をお金で買う女なのですよ。」
「言っときますけど、私、料理は一通りこなせるんですよ?
 悟史くんが帰ってきたら毎日だってこの腕前を披露しちゃいますから、そのおつもりで。」

……ここに転校してきて不思議だったのが、
双子の姉妹なのに魅音とは別居しているこの詩音の存在だった。
複雑な事情があるようで口ごもる魅音とは対照的に、詩音はさらりと説明してくれた。
雛見沢の祟りや「園崎」について。そして沙都子の兄・悟史について――。
悟史に沙都子を託されたから、と毎日遠い道のりを通ってきているのだ。
すべてを知っても態度を変えない俺を見て、魅音は後で「ありがとう」と言ってきたが、
人にはいろいろ事情がある。俺だって昔のことはあまり話したくはない。
時間はかかるだろうが、俺自身が納得したらみんなにきっと話す。
でもみんなはきっと、それを聞いても少しも態度を変えないだろう。
『仲間』だから。……それと同じだ。
俺は魅音と詩音、そしてみんなの、雛見沢のことを知ることができて嬉しかった。
ここでこうしてみんなで幸せなひとときを過ごせることも。

「そーゆーお姉はどうなんです?……何ですかこれ?」
「煮物・ポテトフライ・ 枝豆・天ぷら・釜飯・鯛のお頭……。」
「――あからさまに宴会メニューだが。」
「あははー、夕べ宴会で余っちゃってさー。
 婆っちゃとお手伝いさんとだけじゃ食べきれないしね。」
「少なくとも、解凍してる分だけ私の方がお姉より偉いです。」
「うーーーーー……。」
「でもやっぱり魅ぃちゃん、盛り付けセンスあるよ!色合いも形も綺麗でかぁいいよ〜〜。」
「レナ、持ち帰るなよ?みんなで食べるんだからなっ!」
「はぅ……。ところで、梨花ちゃんのは何かな?……かな?」
「――ボクのはすごいのですよ☆ホウレン草の胡麻和えに若竹煮、
 ぶり大根に豚の角煮にミョウガとジャコのチャーハンなのですよ。」
「「「「「………………。」」」」」
確かにすごい。手の込んだ多彩なメニューだ。だが………。
「――みんな、醤油料理なんだな。」
「ちゃんと魅ぃからもらった本場ものの醤油なのですよ。」
にぱ〜☆………この満面の笑みには誰も勝てない。まあ、どれも美味しいからいいんだが。
「――け、圭ちゃんは何かなぁ?」
この微妙な空気を吹き飛ばすべく、魅音が口火を切った。
「俺は頑張ってみたぞ!――味は保障できないがな。」
「胸張って言うことじゃありませんわー!」
「――あ、でもこの玉子焼き綺麗にできてるよ。」
「圭一、頑張ったのです。」
「……でも、このお弁当箱、玉子焼きだけなのかな?……かな?」
「圭ちゃん……玉子焼きだけで力尽きたんですね。」
「う………っ。」
さすがに詩音、容赦ない。
「図星のようですわね。」
沙都子も呆れ顔だ。
「――あ、でもこれ美味しいよ圭ちゃんっ!出汁も効いてるし、火の通り具合もちょうどいいよ!」
「――ホントだ、美味しいよ圭一くん!」
「――あら、なかなかやりますね圭ちゃんっ。」
「圭一さんもあと一年くらい頑張れば私たちの足元位には追いつけるかもしれませんわねー!」
わしゃっ。わしゃわしゃわしゃ……っ。
無言で沙都子の頭に手を置き、乱暴に撫でまわす。
「…ふわっ!?……髪が乱れますわっ、くしゃくしゃにしないでくださいませっ!」
「お前はまず、俺たちの身長に追いつくのが先じゃないか〜?ほれほれっ。」
「追いつかなくていいよ〜。ちっこい沙都子ちゃん、かぁいいよぉ〜☆」
「髪の毛ぐしゃぐしゃでかわいそかわいそなのです。」
「――あ、あとで覚えてらっしゃいませっ!」
乱された髪を必死に整えながら悪態をつく。…今日の部活は盛り上がりそうだな…。

「…ところで、沙都子は何を持ってきたんです?」
「――そうそう、今日はとっておきなんですのよー!……ほら!」
「――――――――――う゛っ。」
沙都子が嬉しそうにバッグから取り出した「お弁当」を見て、詩音が固まった。
「詩音さん、今日は私が詩音さんのために腕によりをかけて持ってきたんですのよー!」
「――って、待て沙都子っ。腕によりをかけて…って、缶詰じゃねーかっ!」
机の上に置かれた2つの缶詰。――それが沙都子の「お弁当」だった。
「をーっほっほっほ!そうですわ、まさしく缶詰ですわっ!
 ――ですが手抜きじゃありませんわよっ。缶詰が苦手な詩音さんのために、
 美味しいものを一生懸命選んだんですのよー。」
「う……、さ、沙都子ぉ………っ。」
魅音から話は聞いていたが、本当に缶詰が苦手なようだ。
「うわぁ、詩ぃちゃんが困ってるよぉ…新鮮でかぁいいよぉ〜〜」
―――悪いが、同感だ。
「詩音さんには日頃カボチャ料理をたくさん振舞っていただいてますし、
 そのお礼に詩音さんの好き嫌いをなくして差し上げますわ!」
バッグをひっくり返すと、次々出てくる缶詰の山。机の上は缶詰だらけになってしまった。
「う……っ、お姉ぇ〜〜……、」
いつもの余裕はどこへやら、弱りきった表情で魅音に救いを求める詩音。
「いい機会だし、缶詰嫌いを克服してみたらぁ?美味しい食材を缶詰ってだけで嫌うのは可哀想だしね。」
魅音は妹をあっさり見捨てた。一見妹のためともとれる言葉だが、完全に面白がっている。
「そんなあ、お姉ぇ〜〜〜!!」
「――詩音さん、これはあなたのためなんですのよ?
 …もしもの時に缶詰食品が食べられなかったら、飢え死にですわよ?長生きはしたいでございましょう?」
「う………うわぁ…っ。」
いつも詩音が沙都子にそうするように、理詰めで迫る沙都子。完全に立場が逆転している。
「――さあ詩音さんっ、どれになさいますかー?マグロのフレーク?ツナ?
 コーンもなかなかいけますわよ?それとも渋く焼き鳥ですか〜〜?」
「スイカの缶詰もあるのですよ。」
「――い、いやぁあぁあぁぁあああっっ!!悟史くぅうんっ、助けてぇえぇええぇえっ!!」
バリエーション豊かな缶詰を目の前に突き出され、詩音の限界メーターは振り切れた。
ボロボロと涙を流し、髪を振り乱して首を振り、必死に拒む。
「――なんか、こんな詩音もいいもんだなぁ……。」
「うんうん、詩ぃちゃん、かぁいいよぉ〜〜。」
「――いやぁ、詩音が困ってる姿を見るのはいい気分だねぇ♪」
「スイカの缶詰もあるのですよ。」
「――ちょっとみんなあっ、見てないで助けて―――――!」
「ダメですわよっ!にーにーの、『兄の恋人』としてふさわしい女性になるための、
 私のねーねーとなるための試練ですわよ詩音さんっ!」
「やめてやめてやめて…っ、――いやぁああぁぁぁああああっっ!!」

のどかな昼休み。恒例の大騒ぎ。
まわりの生徒たちもいつものことだと構わず食べ続けている。
みんなで楽しく過ごしながら、『仲間』の悟史を待ち続ける俺たち。

――幸せな、光景――

「――スイカの缶詰もあるのですよ。」








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