ファミリー〜祟殺し編・沙都子救済作戦〜


大石編 〜オープニング〜

 『ファミリー〜祟殺し編・沙都子救済計画〜』の世界へようこそ。
 大石編は、この世界へあなたを誘うオープニングとなります。
 このシナリオの導入部のイベント(圭一の協力要請・詩音との和解など)は、
 他編でも基本イベントとして水面下で起こっているといってもいいでしょう。

 誰も死なず、苦しまず、沙都子が幸せになる世界。
 誤解やすれ違いはあったとしても、やり直しのできる世界。
 沙都子の笑顔で、みんなが幸せになれる。
 ―そんな夢のような世界です。
 沙都子が幸せになってゆく物語をお楽しみください。


【圭一】

――このままじゃ、いけない――
沙都子は今日も学校に来ない。
俺たちに弱みを見せず、ただひたすらに耐えている。
けれど時折り見かけるその姿は憔悴していてあきらかに辛そうだ。
日に日にその瞳から輝きが失せてゆくのが傍からでもありありとわかる。
それなのに――。
「どうかなさいましたの?私は元気ですわよ。」
――沙都子っ………!――


【仲間】

沙都子のいない、教室。重苦しい空気の中、淡々と進む授業――。
――ガタン!!
「――圭ちゃん!?」
「圭一くん!?」
「―――圭一。」
「――前原くん?どうしたの?……授業中ですよ!?」

「――――――――――!!」
――もう限界だ。
このままじゃ、俺は、もたない。
机を蹴散らすように床に膝を付き、両手を付き、そして――。
「――みんな、お願いだ…っ!俺に力を貸してくれ…っ!!」
床に頭をすりつけ、必死に懇願する。
………力のない俺には、これくらいしかできない。
それが歯痒くはあったが、できうる限りのことをしよう、そう決めたから。
俺はここに来て間もない新参者だ。
そんな俺がこんなこと言うのはおかしいだろうが、俺にだってわかる。
――このままじゃ、いけない――!
「沙都子に……北条家に対していい感情を抱いていない土壌があるのは
わかってる。家の事情で魅音が表立って動けないのも承知の上だ。――だがな、
クラスメイトだろ?大切な仲間だろ?家とかなんて関係ない。
家の対面を気にして「仲間」を見捨てるなんて頭首として間違ってる。
…違うか?複雑な事情も知らない幸せな家庭の子どものくせにって思うか?」
「―――圭ちゃん……。」
「それでもし魅音がお咎めを受けるようなら、俺がひとりで背負うから。
だから………っ!」
「――――負けたよ、圭ちゃん。」
「……魅ぃちゃんもね、ずうっと悩んでたんだよ。」
「圭一の一押しを待ってたのですよ。」
「ごめんね圭ちゃん。――私、怖かったんだ。
でも、もう大丈夫。できることなら何でもするよ。――詩音にも、協力してもらう。」
「―――しおん?」
「………うん、私の、ワケありで離れて暮らしてる双子の、――妹。
強力な助っ人になると思う。――話、してみるから。」
「魅音………ありがとう。」
「圭一くん。レナたちは何をすればいいのかな?………かな?」
「もちろんボクも手伝うのですよ。」
「レナ………梨花ちゃんっ、」
「前原さんっ!僕たちも協力しますっ!!」
「富田くん……岡村くん」
彼らに続いて、クラスのみんなが俺の周りに集まって来てくれた。
「――みなさん、授業中ですよっ!?」
「………………。」
教壇の上で声を荒げた知恵先生を、一同は無言で振り向く。
「――先生の指示に従いなさい。今日の授業は特別大切なんですからね。
前原くんリーダーの『沙都子さん救出作戦』は必ず成功させなさい、
私もできる限りのことはしますから。――いいですね?」
「先生………はい!!」


【姉妹】

「――というわけなんだけど……詩音、協力してもらえないかな…?」
「………どうして私が。」
やっぱり……。
放課後さっそく詩音のマンションに行き、今までのこと、これからのことを話して
お願いしてみたけど…やっぱり手ごわそう。
「………っ。詩音が沙都子にいい感情を持ってないのは私だってわかるよ…。
でも、このままじゃ圭ちゃんまで悟史みたいに……っ、」
「――――――――!!」
詩音の目の色が、変わる。狂気をおびた、怖い瞳に――。
「………………あくっ!……し、おん……っ」
すごい力で襟首をつかまれながら、勇気を振り絞って懇願する。
圭ちゃんが、みんなの前でそうしたように。
「――おねが、……しおんっ、このままじゃ圭ちゃん…
私たちに沙都子を託して、あの叔父をどうにかしちゃうよ……っ!」

――沙都子を、託して――

「―――――――っ!!」
詩音がびくんと身体を震わせ、襟首をつかんでいた手から力が抜ける。
支えを失った私が床に崩れ落ちて咳き込んでる間、呆然と立ったまま――。
「――し、おん………?」
「わたし……私、悟史くんに頼まれてた。去年の綿流しの前日、電話で頼まれたの。
沙都子を、頼むからねって………。なのに私、私ってばなんにもしないで…っ!」
「――詩音っ!!」
ぼろぼろと大粒の涙を流すその瞳からは、毒気がすっかり抜けていた。
「――悟史くん、悟史くん……っ!」
子供のように泣きじゃくる詩音を抱き締め、優しく頭を撫でる。
「………まだ、間に合う。お願い詩音。詩音の力が必要なの。
一緒に沙都子を守ろう。――ね?」
泣きながら首を何度も縦に振る詩音を、私は優しく撫で続けた――。


【ファミリー】

「――なんですの圭一さん?私は叔父のところに戻らないといけませんのよ。
あの人ったら、私がいないと何一つできないんですから。」
……翌日、俺は買い物途中の沙都子を強引に学校へと連れ込んだ。
みんなのいる教室に、ぎこちなく入ってゆく姿が、切ない――。
まずは沙都子の頑なな心をほぐしてやらないと始まらない。
沙都子自身が耐えることをやめないといけないんだ――。

「――沙都子……。」
「――――!!」
魅音の影に隠れていた詩音が顔を出すと、沙都子はびくんと大きく震えた。
――詩音と沙都子の話は、あれから魅音に聞いて知った。
魅音の格好で学校に乗り込んで、沙都子に暴行を加えたという。
魅音の姿でだったから、後で事情を説明するのが大変だったらしいが、
沙都子はその「魅音」が詩音だったことを本能的に感じ取っていたようだ。
………この反応も当然だろう。
「………沙都子。今まで……ごめんなさい。」
「――――――ふえ?」
頭を手でかばっていた沙都子がきょとんと見上げる。
その沙都子の前に跪き、ぼろぼろと涙を零しながら懺悔する。
「――私、忘れてたの。大事なことを忘れていたの。
……悟史くんに、頼まれてたのに――。」
「――にーにーに?……何をですの?」
「――『沙都子のこと、…………頼むからね。』」
「――――――!!………にーにー……っ!!」
「わかるでしょ?悟史が望んでいたのは沙都子が独りで耐えることじゃない。」
「詩ぃちゃんやみんなと一緒に強くなって欲しかったんだよ。……だよ。」
「ボクたちを頼って欲しいのですよ。」
「にーにー……にーにぃ……っ!」
「――沙都子。聞いてくれ。悟史は必ず帰ってくる。
だがな、帰って来るのはあんな暗い、寂しい家じゃない。
沙都子も悟史も幸せそうに笑って過ごしてたここが、……この学校が沙都子の家なんだ!
魅音だってレナだって梨花ちゃんだって――オレだっている。
オレは悟史にはなれないけど、でもオレだってにーにーだ!
校長先生は強いパパだ。知恵先生は怒ると怖いけど優しいママだ。
入江監督は大っきいにーにー、オレやクラスのみんなは小さいにーにーだ。
詩音や魅音やレナや梨花ちゃんはねーねーだ。
ここで、オレたちと一緒に幸せに笑いながら悟史を待とう。」
「――――沙都子。もう我慢しなくていいのですよ。」
「――――ふ、ふわあぁぁああぁあぁぁああ……っ!!」
梨花ちゃんに頭を撫でられると、身体中の力が抜けたように泣き出した。
今まで堪えていたすべてのものから開放されて、大声で泣き続けた。
――俺たちも、一緒に泣いた。………心地よい、涙だった――。


【作戦】

――ひとしきり泣いて、赤くなった瞳で微笑んで。
「―――で?皆様方はどのような作戦を立てておりますの?」
「さすが沙都子、話が早いな!……実はな……。」
前もって打ち合わせ済みの作戦。
これには沙都子の力が大きな鍵となる。
輝きを取り戻した瞳で興味津々で作戦に聞き入る沙都子の姿に、
俺たちはこの作戦の成功を確信した――。
「――いいかみんな。この作戦に失敗はない。
後でみんなでお祝いパーティーだ!」
「「「「「おーーーーーーー!!」」」」」

――悟史、力を貸してくれ………な。
悟史のバットをぎゅっと握り、「その時」を待つ――。


【決行】

プルル……プルル……ガチャ。
「――あ、北条様のお宅でしょうか?私、雛見沢分校の知恵留美子と申します。
沙都子さんのことで直接お会いしてお話したいことがございます。
――ええ、沙都子さんから事情はすべて伺いました。
教室で沙都子さんと一緒にお待ちしておりますので。………それでは。」
受話器を置くと、知恵先生はVサインをして微笑んだ。
――よし、呼び出し成功。
すべてをバラされたと知ってかなり頭に血が上った状態だろう。
注意力も散漫になっているに違いない。………思うツボだ。
「――沙都子。辛い役目だろうが、頼んだぞ。」
「――誰に言ってるんですの?こんなにたくさんのにーにーやねーねーに守られてて
辛いことなんてありませんわ。」
「――ああ、そうだったな。」
「――さあみんな!用意はいいですね?さ、沙都子さん。私たちは教室で待ってましょう。」
「先生。みなさん。………よろしくお願いしますですわ。」

バイクの音が近付いてきた。――叔父だ。
猛スピードで飛ばしているようだ。
――それもそうだろう、虐待している子どもの教師に呼び出されたんだ。
どうにかして誤魔化して取り繕わなければいけない。相当焦っている。
バイクを倒すくらいの勢いで飛び降り、校舎に駆け込んでくる。
――ガラッ!!
教室の扉を、思いきり開く。
――ぽふっ!
粉だらけの黒板消しが見事に命中。基本中の基本だ。
「ぶわっ!?………けはっ、くしょいっ!!」
――だが沙都子なりのスパイスが効いている。………胡椒だ。
文字通りのスパイスにくしゃみを連発させてよろけた拍子に、
ワックスの付いた雑巾を踏んでつーーーーーーーーーと滑る。
両手をバタバタさせて窓際まで滑ってゆく姿は、滑稽だ。
慌ててつかまったカーテンは切れ目から裂け、叔父の頭にスッポリかぶさった。
「をーーーーっほっほっほ!叔父様、どうなさったんですの?
先生がお待ちかねですわよ?早く席についてくださいませ☆」
「………ぐ、ぐおお………っ!」
強引にカーテンを外し、物凄い形相で沙都子の方へとふらふら歩き出す。
もちろん、その進行先にも数々のトラップが仕掛けられていた。
コンニャクが降ってきたり、生のとき卵がズボンの中に注ぎ込まれたり、
さらにそのズボンの中に天ぷら粉をぶちまけられたり、
牛乳を拭いた雑巾を身体中にくっつけられたり……。
どれも威力は弱いが、その分屈辱的な罠ばかりだ。
「………さ、さとこぉ……っ、ぐおぉっ……!」
笑いながら教室を出てゆく沙都子を追って、
怒りに燃える叔父が校庭へとおびき出されてきた。
「――ぶざまな格好ですわね、叔父様。動物園のゴリラみたいですわー!」
嫌みったらしく笑ってみせる。
「――ガ、ガキだと思ってりゃいい気になりやがって……っ!」
「――相手がガキだからっていい気になってたのは叔父様の方ですわっ!!」
「………ん、だとぉ?」
「凄んで見せたって無駄ですわー!あなたのような下賎な方に凄まれたって、
もう私、ちっとも怖くなんかありませんことよー!
悔しかったら、また私を殴るなり蹴るなりしてごらんなさいませ!
をーーーーっほっほっほっ!!」
「……き、きさまあっ!!」
校庭の中央であざ笑う沙都子に向かって走り出した叔父が、突然消えた。
「うわあっ!!」
―――ハマったな。
俺たちが前に見事に引っ掛かった、山の中のトラップ。
身体ギリギリの直径の、細長い、落とし穴。
それと同じものに首まで埋まり、身動き一つとれずに呆然とした叔父の顔だけが
地面から生えている。――ように見える。
「――いい格好ですわね、叔父様。私、もう無駄な我慢はやめにしましたの。
ですからそのおつもりで。――みなさま!!」
沙都子の合図で、全生徒が叔父の周りに集まってくる。
無言で、足元の叔父を見下すように、ただ見つめながら。
「ひい………っ!!」
――これは怖いぞ。
子どもだけじゃない。知恵先生や入江さんに校長先生、
話を聞きつけてきた富竹さんや鷹野さん、説得した俺の両親といった大人までもが
冷ややかに見下しているんだからな。

――さあ、俺の出番だ。悟史、頼んだぞ。
俺は悟史とともに、――悟史のバットを手に、叔父のそばへと向かう。
みんなが俺に道を空ける。
叔父は俺に気づいて顔面蒼白になった。
自分に向かってバットを持った少年が近付いてきたのだ。しかも身動き一つ取れやしない。
「――や、やめろっ、やめてくれ…っ!やめて下さい、助けてくださいっ!!」
「――情けないな。沙都子はそんな弱音吐かなかったぞ。」
静かに、バットを振り上げる。
ひゅうっ………。周りも、叔父も、息を呑んだ。
今の俺は鬼のような顔になっているだろう――。
沙都子のために、悟史のバットで、この叔父を―――。

フォン………………ドガッ!!

「―――――――――っ!!」

叔父の顔の真横に打ち付けられたバットは、血の代わりに土を撒き散らした。
「―――お前みたいなクズの血で、悟史の大事なバットを汚したくないからな。」
「―――――………っ!」
命拾いした叔父は、限界がきたのか、泡を吹いて気絶してしまった――。
「―――終わったぞ。」
俺の一声で、わあっと歓声が上がる。
みんな笑っていた。涙を流しながら笑っていた。
沙都子も、久しぶりに弾けるように笑っていた。

――悟史、早く帰って来いよ。
それまで、沙都子はみんなで守ってみせるからな――。


【やさしい追放】

「………う、………。――――っ!?」
寒気を感じて、鉄平は意識を取り戻した。
あたりはすでに暗くなり、冷えた空気が漂う、雛見沢の、路上――。
「―――ここは……?なんでこんな路上で、オレは……」
身体中が鈍く痛む。その痛みに導かれるように、
ぼんやりとした思考がクリアになってゆく。
「――――!!沙都子め……っ!!」
「――気がつかれましたか。こんなところで寝てしまっては風邪を引きますよ〜?んっふっふ!」
恰幅のよい中年男――大石が目の前に立っていた。
「――お、おい、お前警察の人間だろ!?
聞いてくれよ、オレ、酷い目に遭わされたんだ…っ、」
「酔っ払ってるんですか〜?いけませんなあ。
村を出るあなたのために学校で「送別会」を開いてくださったと聞いてますよ。
いくら別れが名残惜しいからって、そんなになるまで酔いつぶれるようでは
先が思いやられますなあ。」
「――お前、何言って………」
「園崎の遠縁の店で、住み込みで働かれるそうですね。
いくら居酒屋だからって、飲みすぎて迷惑掛けちゃダメですよ〜?んっふっふ!」
「―――な……んの、話だ……?オレは雛見沢を出る気なんざ、」
「――では、そのトランクは何ですかな?」
「トランク?………っ!!」
いつの間にか、足元に大きなトランクが置かれていた。
慌てて開けてみると、鉄平の衣服や私物がすべて詰め込まれていた。
なぜか住み込みで働くことになっていた園崎の遠縁の店の連絡先のメモまでも。
「………っ、これは………っ、」
「――ねえ鉄平さん。私はよそ者ですから余計にそう思うのかもしれませんがね、
雛見沢の住人の結束の強さは筋金入りです。敵に回したら生きてゆけない。
楽して甘い蜜は吸えませんよ。」
「――な、何言ってやが、」
「たとえば、ここで倒れていたあなたが酔っ払いではなくて死体だったとしたら。
…村中、口をつぐむでしょう。そして村中でアリバイを作り合い、
犯人をかばうでしょうな。」
「―――――――。」
「――よかったですね、命があって。」
言葉の意味を理解したのだろう。鉄平の顔色が悪くなってきた。
「――おやおや、やはり飲みすぎのようですなあ。部下の車で送らせましょう。」
近くの電話ボックスで部下を呼びつけ、やって来た車に鉄平を乗せ、
行き先を告げてドアを閉めた。
最後まで黙ったままの鉄平を乗せた車が、遠ざかる――。


【そしてまた、圭一】

「――まあ、こんなとこでしょうかね。」
「大石さん。………ありがとうございます。」
叔父と大石さんとのやり取りを見届けて、俺は物陰からひょっこり顔を出した。
「……ああ、前原さん。上手くいったようですねえ。
……でも、もうこんな物騒なことのないよう、願いたいものですな。」
「――もう大丈夫ですよ。……それに物騒なことなんて何もなかったんですから。
遠くで働くことになった仲間の叔父さんを、学校のみんなでお別れ会を開いて
みんなで楽しく遊びまわっただけですよ。叔父さんもはしゃいでました。
さすがにいい年ですし、体力も落ちてすっかり疲れてしまったようですけどね。」
「……まあ、そういうことにしておきましょうか。
敵に回すと厄介ですが、味方になればこれ以上心強いものはありませんからな、
………んっふっふっ!」
「それは大石さんのことですか?」
「――さあて、どうでしょう?んっふっふ…。」
笑いながら、大石さんは帰っていった。

………………。

強引に追い出してしまったが、これが「最悪の選択」以外で俺たちにできる
最良の方法だった。
これ以上そばにいたら、沙都子は壊れてしまう。
そしてその前に俺自身、叔父に何をしでかすかわからなかった。
遠く離れたところで、堅実に暮らしてくれればそれでいい。
追いかけてまでどうこうしない。
そうすれば、お互い幸せでいられる。
――悟史がいれば、きっともっといい方法がとれたのだろう。
無力な自分が情けなかったが、
これからも沙都子のたくさんのにーにーやねーねーの内の一人として、
沙都子を守ってゆくよ。
だから早く帰って来いよ、悟史―――。


【叔父】

「すいませーん、まだ準備中で………、――あんたはっ!」
「――どうです?その後お仕事には慣れましたかな?んっふっふ!」
あれから3ヶ月。居酒屋の開店前の準備に追われるオレの前に、
ふらりと大石が現れた。
「――ああ、おかげさんで真っ当な仕事に就いてこつこつ働いてるよ!
落ちぶれたオレの様子をあいつらに報告するために来たんなら残念だったな!」
入口前で、のれんや看板の準備を続ける。相手になんかするものか。
「――いいえ、とんでもない。私は個人的にあなたに会いに来たんですよ。」
「畜生……どいつもこいつも、オレをバカにしやがって……っ!」
「バカにしていたのは鉄平さんの方でしょう?あなたが心を開きさえすれば、
やさしく受け入れてくれる場所でしたのに……。
あんな幼い子の、今となってはたった一人の肉親なのかもしれないのですから。
――だからあなたは生きていられたんですよ?」

『―――叔父様―――』

「―――――――っ!!」

――そうだ、あの子はオレを、こんな男を、「叔父様」と呼び続けてくれていた。
あまり上手ではなかったが、それでも一生懸命作ってくれた料理は暖かかった。
オレが耐え切れずに逃げ出した雛見沢で、ずっと笑顔で暮らしてた
「北条の娘」が癪だった。不思議でたまらなかった。
オレの手元に呼び戻して世話をさせているうちに、
あの生き生きとした笑顔は、死人のような乾いた笑顔になっていった。
それが無性に腹立たしくて、どうにかして笑わせたくて、厳しくあたった。
殴ってやった。蹴ってやった。出された料理に文句をつけて、ひっくり返した。
『畜生、笑え、………笑ってくれ、なんで笑わないんだ…っ!』
そして、しまいには表情がなくなった―――。

―――何をやってたんだ、オレは!!―――

『―――叔父様―――』

「………………っ!」
畜生……バカだ、バカだよ、オレは……っ。
恥も外聞もなく、両手をついて泣くしかできなかった。
もっと早く気付いていれば、もっと違った関係をあの村で築けたのに―――。
「――雛見沢に、帰りますか?」
オレの前に、大石が立っている。限りなく優しい表情だった。
「………今更、どの面下げて帰れるんだよ…っ、」
大石の肩越しに都会の薄汚れた空を見上げ、あの澄んだ雛見沢の空を思う。
「―――もう、遅いんだ………。」
「………それでは、こんな手はいかがですかな?」
「………………?」


【――そして、ファミリー】

――叔父が去って半年後。
すっかり以前のような生活に戻っていた沙都子宛てに、段ボール箱が届けられた。
住所は分校宛てだったので、みんなの前で開けてみると。
洋服や食料、本に文房具、生活雑貨やおもちゃまでもが、箱いっぱいに詰め込まれていた。
――無記名だったが、これがあの不器用な叔父なりの精一杯のお詫びなのだろうことは
俺たちには容易に分かった。
「――まあ、これはきっと私をどこかで見守ってくれている
見知らぬ「叔父様」からの贈り物ですわ!少女漫画みたいですわーー!!」
満面の笑みで、おどけたように言いきった。
「――おう、沙都子すごいなあ!足長か?紫のバラか?」
「いやー、景気のいいお金持ちもいるもんだねー!
おじさん、うらやましいわぁ!」
「沙都子も隅に置けないですねー!」
「沙都子ちゃんっ、すごいねっ、よかったねえ!」
「ボクにも「叔父様」を少し分けるのですよ。」

――そう、沙都子にはやさしい「叔父様」がいる。
俺たちはそんな「叔父様」と沙都子の関係をやさしく見守る。
―――――これでいい。
さすがにあわせる顔がないだろうから、叔父はここには戻らない。
だけど――――。

沙都子は「叔父様」から贈られたワンピースを着て、
誇らしげに村中を歩き回った。
一緒に雛見沢を散歩するように、笑いながら、歩いた。
沙都子の右側に叔父。左側には悟史。三人仲良く雛見沢を歩く。

たとえ会えなくても、離れて暮らしていても、血が繋がっていなくても、
俺たちは、みんな、ファミリー…―――。









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