綿流し祭終了記念SS「知らない男。」


5年目の綿流し祭は、一人の犠牲者も出ずに、無事に終わった。
最近様子がおかしかった鷹野さんも、すっかり落ち着きを取り戻したようだ。
研究の進みの悪さにイラついていたのかもしれない。
それとも何の事件も起きなかったから、拍子抜けしているのだろうか。
……そっちの可能性の方が高いかもしれないな。

鷹野さんは祭具殿侵入を僕にそそのかしていたが、
祭りの前に梨花ちゃんたちに呼び出されて、僕はずうっと待ちぼうけ。
梨花ちゃんの奉納演舞が始まろうという頃、ようやく祭具殿の前に現れた鷹野さんは、
何と言うか……とても晴れやかな表情をしていた。
「ジロウさん、お待たせ。……一緒に梨花ちゃんの演舞を見に行きましょう。」
「え?祭具殿侵入は……っ?」
「それはもういいの。――さ、早く。梨花ちゃんもジロウさんに撮影して欲しいって言ってたわ。」
何だかよくわからないまま、僕は鷹野さんと一緒にみんなのもとへ走った――。

「……ずうっと、ね。」
「…………え?」
雛見沢一帯を見下ろす高台で、長い髪を風に任せながら鷹野さんはぽつりと呟く。
「とても長い間――私の目にうつる世界のすべてが深い霧に覆われていたの。
 だけどあの日、とても強い風がそれらを吹き飛ばしてくれた。
 ……世界がこんなに綺麗だったなんて知らなかったわ。」
「そう……よかった。」
何だかよくわからないが、僕は何も聞かない。その笑顔がとても綺麗だったから。
「ジロウさん、…………ごめんなさい。」
「――――え?」
横に立っていた僕に向き直り、とても悲しそうな瞳で見つめてくる。
「……あ、祭具殿侵入のことかい?いいんだよ。僕も正直乗り気じゃなかったし。
 ――鷹野さん?」
「ごめんなさい……ジロウさん、ごめんなさい……っ。私、あなたを……あなたまでを……、」
「た、鷹野さんっ!?……どうしたんだい?僕は怒ってなんかいないよ……?」
「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめん……ジロウさん……っ。」
僕にすがり付いて、子どものように泣きじゃくっている。
その姿はとても弱々しくて、頼りなげで……僕は優しく背中を撫でる。
僕に出会う前、彼女がどんな生活を送っていたのかはよくわからない。
けれど神秘的なその表情に、深い哀しみと影が刻まれているのはわかっていた。
彼女がオーラのようにまとっていたそれらが祭りの夜の綿流しの儀式で綺麗に洗い流されて、
少女の頃の、本来の彼女に戻ったのだろう。
――なーんて、僕も雛見沢の神秘に影響されちゃったかな?


『あれでよかったのですか梨花?』
「ええ、いいのよ。彼女には生きてもらわなくちゃ。死んでもらっちゃ困るのよ。
 彼女が今まで殺した――私や富竹やたくさんの人たちの分まで、
  生きてもらわなくちゃいけないのよ。それが彼女の罪滅しなんだから。」

祭りが終わり、再び始まる「いつもの日々」。
それがどんなに尊く希少なものか、知らないのは富竹だけ――。







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