やさしい人。


優しい人でありたい。

きゅうくつな、けれどいごこちのいいばしょからでてみると、
もうひとりのわたしがないていた。
わたしもなんだかなけてきた。
わたしはここにいるよ。
わたしはここにうまれてきたんだよ。
ねえ、わたしは――――
きゅうに、のどがくるしくなる。
こえがでなくなる。
くるしいままめをあけると、
おにがいた。
こわいかおで、わたしのくびをぎゅうっとしてる。
どうして?
わたしがきらいなの?
うまれてきてほしくなかったの?
ねえ、どうして――?

わたしはふたたび、まっくらななにもないせかいへきえてしまうの?


「――――――――!!」
「……………………っ!」
こわいこえが、たくさんきこえる。
どったんばったん、うるさいおともたくさんきこえる。
せっかくきもちよくねてたのに……わたしはもういちどめをあける。

――まっしろな、おへや。
わたしをのぞきこむ、やさしいえがお。
わたしはこのひとをしっている。
だって、このひとのなかにいたんだもの。
となりには、もうひとりのわたし。こっちをみてわらってる。
――わたしもいっしょにわらった。
おにのかおと、やさしいえがお。
わたしもこんなふうにやさしいえがおでいたい。
おにはいやだ。こわいから。
――ね、そうだよね、わたし?


はは……あはは……。
魂の抜けた、沙都子だった物体を前に、私は笑う。
――何をやってるんだろう、私――
あんなに鬼は嫌だって思ったのに、私の首に手をかけた「鬼」と同じ――それ以上じゃないか。
詩音が母の優しさをすべて引き継いでしまったの?
やさしくありたかった。
沙都子も、梨花ちゃまも、おじいちゃんも、鬼婆も、――詩音も。
誰も憎むことなく、やさしい笑顔でいたかったのに。
やっぱり私は、生まれてきちゃいけない子だったのかな……。

今度は間違えないよ。
もしもう一度私になれるなら、たとえまた「詩音」になってしまっても、
悟史くんを失ってしまっても、
誰も恨まない、憎まない。
鬼にはもう、なりたくない――!!

「――なんだって?分校に転校したいって?」
「――はい。いいですよねそれくらい。
 私は爪を犠牲にしたのに悟史くんまで失ってしまったんですから。」
私は鬼婆の元へ直談判しに行った。
またけじめをつけさせられるかもしれないけど、それくらい耐えてみせる。
「あたしからは何も言わないよ。婆さまに従うだけさね。」
母さんは私にチャンスをくれた。せめてもの償いのつもりかな……ありがとう。
「鬼婆さま、反対しますか?また私をいらない子にして首に手をかけますか?
 ――言っときますけど、私は園崎の不始末の尻拭いに行くんですよ?」
「――――んだって?」
「だってそうじゃないですか。北条家への差別を増長させたのはあなたたちですよ。
 その差別のせいで叔母が荒れて兄妹を不幸にしてしまったんですから。」
「………………。」
鬼婆はだんまりを決め込んだ。
「悟史くんはどうなっちゃったのか、あなたたちの仕業なのか、ずいぶん考えて悩みました。
 ……今でも正直、考えるたびに胸が苦しくなる。爪も痛む。
 あなたたちに恨みをぶつけることも考えなくはなかった。
 でもそんなことしたら、私まで鬼になってしまうから。――だから、」
「……詩音!?」
「…………詩音。」
両手を付き、頭をすりつけ。
「どうかお願いします、私を分校に行かせて下さい。
 悟史くんの最後の願いをかなえるために、沙都子を守るために。
 私は「園崎」を信じます。だからどうか私を信じて――!」
「…………茜。」
「はいよ婆さま。」
起こしていた半身を布団に潜り込ませ、母さんに小声でなにやら呟いた。
「婆さまはお休みだ、さあ出た出た!」
私の背中を部屋の外へと押し出しながら、母さんは笑顔で囁く。
「……勝手にしろだってさ。鬼婆さまのお墨付きだよ、しっかりおやんな。」
「………………はい!」

大丈夫、間違えないよ。
私は大切な人を愛し、守ってみせるから。







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