ファミリー〜祟殺し編・沙都子救済計画〜レナ編


――俺は鉄平。
一度は逃げ出し、そして逃げ帰ってきたこの村で、
血の繋がらない姪っ子と暮らすことになっちまった。
……いや、正しくは友達と楽しく暮らしてた姪っ子を無理やり手元に呼び寄せて
世話をさせている、といった方がいいだろう。
情けねえが、俺は家事の類はまったく駄目だ。
しばらくは俺も律子を失ったショックで荒れていたが、
ここで暮らしてゆく以上、しっかりしないといけねぇな……。

「――え?沙都子ちゃんですか?」
「――ああ、様子はどうね?」
俺は姪っ子の沙都子の友人の中で一番話しやすそうな娘に話しかけた。
1人で帰宅途中だった娘は穏やかな表情のまま、さらりと答える。
「お友達から引き離して、無理やりこき使って。元気な方がおかしいです。」
「………面目ねぇ。」
この娘――レナと言ってたな――は、人当たりはものすごく良いが、
痛いところを鋭くついてくる。
「もう少しだけ、待ってくれんね。……1人で生活できるようになるまで、もう少しだけ。」
「『もう少しだけ』って、借金取りに追われてる人の決まり文句ですよ。
 具体的に示してくれなきゃ信用できない。」
………正論だった。
今の俺は、昔散々食い物にしてきたカモの姿とそっくりだったから。
「――何を、するの?追い詰められた沙都子ちゃんに、何をしてあげられるの?」
「………………っ。」
吸い込まれるような瞳で見つめられて言葉に詰まる。
その不思議な輝きの瞳の色が、一瞬、俺を昔に引き戻す。
――遠い昔。お袋が野菜嫌いの俺のために色々工夫して料理を作ってくれたことが、
ふっと頭の中に浮かぶ。
幸せだった、あの頃が――。

俺はレナから沙都子の苦手な食べ物を聞いた。
一瞬きょとんとしていたが、この賢い娘は俺の真意をすぐに汲み取り、
「協力するよ」と喜んでくれた――。

それからが、大変だった。
沙都子を学校へ行かせ、俺はレナに教えてもらったカボチャ料理作りに励んでいた。
帰宅した沙都子に気付かれぬよう、いつものように振舞う。
……もちろん、手を上げないように、なるべく穏やかに接するように心がけた。
数日後、やっとどうにかそれらしきものが完成し、俺は沙都子の帰宅を首を長くして待った。
………………。
………………。

「……叔父様。ただいま帰りました……。」
「おお、沙都子ぉ!」
「―――ひっ!」
――ああいかんっ、怯えさせてどうする俺っ!
「……沙都子。沙都子はカボチャが嫌いなんね?」
「…………っ。…………き、嫌い……ですわ。」
弱みを知られて、よりいっそう震える沙都子。
別にお前を苛めてるわけじゃないのに。
「――実はな、沙都子の好き嫌いが治るようにとカボチャ料理を用意したんね。――ほら!」
でんでろれーんっ。
まさにそんな擬音が似合いそうな、俺様のカッコいいカボチャ料理の数々。
「………………っ!!」
沙都子の顔が引きつっているのがわかる。
そうか、頑張って笑顔を作ってくれるほど嬉しいか!
「さあ沙都子っ。たっぷりあるから好きなだけ食べるといい。――ほら。」
沙都子をテーブルの前まで導くと、ものすごくゆっくりとした動きで座った。
大丈夫、怖くない。俺のこの料理で沙都子もすぐに大喜びだ!
カボチャのグラタンをスプーンですくって、沙都子の口元まで持ってゆく。
いわゆる「あーんして☆」ってやつだ。
ちょっと照れくさいが、実の親子みたいでくすぐったくも気持ちいい。
ねちょわ〜。
スプーンから溢れそうなほどの真っ黄色のカボチャのソース。
レナはソースに少し練りこむだけでいいといったが、カボチャは美味いんだ。
大きく切ったのをたっぷり入れてやんなきゃ喜ばねえだろ…。
「……うぅ……っ。」
――おお、沙都子も喜んでるな。俺も嬉しいぞ沙都子!
「――さあ、あーーーーーーーん☆」
俺が一生懸命作った手料理を食べてもらえる。
今までの苦労が報われる瞬間は近い。
叔父らしいことをしてやれなかった俺の、初めての――。

ばしん。
「―――え?」
ぺしゃっ。
カラカラカラ……ン。
はたかれた手が、ジンジンする。
床の上には、俺の愛情込めた、苦労の結晶の、カボチャ料理が――。
「――――――――――っっ!!」
―――の、ガキっ!!
髪を鷲掴み、強引に頭を押さえつけて再びスプーンを押し付ける。

「――畜生、食えっ、食いやがれ……っ!」
「んぐ………っ、んんんうっ!」
――――なんだ、これ。

「――ほら、口開けろ!食うんだよっ!!」
「やぁああぁああ……っ、」
―――なにやってんだ、俺。

「ちゃんと噛んで味わうんだ、いいなっ!」
「うう……っ、んぐぅ……っ。」
――沙都子を喜ばせたかっただけなのに。

「オラ飲めっ!出すんじゃねえぞ、飲み込みやがれっ!」
「うぐ……おうぇ……っ!」
――なんでこんなことになってるんだ?

「ふわぁ……うぐっ…ひっく……、」
――沙都子が、俺の手料理を食べている。

「んぐ……はぐ……っく、」
――それなのに、ちっとも嬉しくない――。

俺は泣いてる沙都子にどう接していいかわからずに、
テーブルの料理をただ片付けるしかできなかった――。



沙都子ちゃんが学校に来るようになって、少しだけ落ち着いてきたようだ。
叔父さん、ちゃんと料理作れるようになったかな……?
いつものように、いつものような、楽しい昼食。
圭一くんがいつものように沙都子ちゃんの頭に手をやる。
きっと沙都子ちゃんは頬を染めて喜ぶだろうな。……ちょっとうらやましいかな?かな?

バシン……!
カシャン、……コロコロカラカラ……。
「…………え……?」
圭一くんの手が、拒まれた。
「…………沙都子、……ちゃん…?」
戸惑う圭一くんは、さらに沙都子ちゃんに近付き、再び触れようとする…駄目だよ!
沙都子ちゃんは圭一くんを拒絶し、食べた物まで吐き出して。
怯えてた。恐れてた。パニックを起こしながらも、ひたすら謝って。

「……ごめん圭一くん!圭一くんはちょっと後ろに行ってて!!」
圭一くんじゃきっと逆効果だ。

「……大丈夫だよ沙都子ちゃん、もう怖いことなんかないよ……!ほら、……安心して!」
泣きじゃくる沙都子ちゃんを優しくなだめる。

「……ぅああうぅあぅうぅ…………あぅ…………っ、」
よかった、少し落ち着いてきたみたい。
「沙都子ちゃん、……何があったのか話してもらえるかな?」
「うう……おじさまが……っ。叔父様が、カボチャ料理をっ……。
 ぐちゃっとして……気持ち悪くて……嫌だったのに、無理やり……っ。」
――――――っ!!

『はい、レナ特製、カボチャ料理レシピだよ。……だよ。』
『おお、助かるんね、ありがとうな!』
『でも……本当に手伝わなくていいの?結構……かなり難しいと思うよ?』
『いや、助太刀は無用ね。1人でやりとげなくちゃ意味ないけんのう。』
『沙都子ちゃんの好き嫌いがなくなって、仲直りできるといいね☆』

ガッシャーーーーン!!
掃除用具入れを、蹴り倒した。物に当たってしまった。
沙都子ちゃんの背中を抱いて、一緒に泣いた。
圭一くんがしつこく聞いてくるけど、こんな状態の沙都子ちゃんの前で話せることじゃない。
「うっさいなぁああぁッ!!黙ってろって言ってんでしょおおぉッ!!!」
私はつい声を荒げてしまった。

――叔父さんは、悪くない。だけど急ぎすぎたのだ。
追い詰められていた沙都子ちゃんと、関係修復を焦る叔父さん。
……こうなることは、考えてみればすぐに予測できたはずなのだ。
「許して……、何もできなかった私たちを……許して……。」
私がちゃんと最後まで手伝ってあげてれば、こんな辛い思いをさせることなかったんだ――。

知恵先生の登場に、無理に笑顔を作ってその場を取り繕う沙都子ちゃん。
私はあえて、沙都子ちゃんに合わせる。

「……私たちが…………!無力だから…………!!」
「――魅ぃちゃん、それは違うよ。まだできることはある。
 ……圭一くんも梨花ちゃんも、話を聞いてくれるかな?」

「――な、なにぃいっ!?無理やりカボチャ料理を食わされたせいだぁっ!?」
校舎裏に、圭一くんの怒号が響き渡る。
「………………うん。」
私は、叔父さんに声をかけられたこと、叔父さんが関係を修復しようと努めていたこと、
けれど焦るあまり事態を悪化させてしまったことを話して聞かせた。
「――な、なんだよ、俺はその、てっきり……。」
「――お、おじさんもその、てっきり……。」
「圭一も魅ぃも考えすぎなのです。」
「叔父さんに悪気はなかったんだろうけど、ちょっとやりすぎだよ。
 でも、ちゃんと最後まで見届けなかったレナも悪いの。
 ……今日、叔父さんのところに行ってくるよ。」
「レナ……俺に何ができる?沙都子に何をしてやれる?」
「……圭一くんは、沙都子ちゃんのにーにーだよ。
 今はただ見守ってあげて。構うだけが愛情じゃないからね。」
「レナ……後で材料とカボチャ料理のレシピ、持ってくよ。
 こういう苦手克服メニューって、詩音が得意だから聞いてくる。」
「魅ぃちゃん……ありがとう。」
「今日は沙都子の面倒はボクがみるのですよ。鉄平は任せたのです。」
「梨花ちゃんがいてくれるなら沙都子ちゃんは大丈夫だね。」
「………そういうことだったんですねっ!?」
「「「「知恵先生っ!?」」」」
いつの間に混じってたんだろう。ちっとも気付かなかったよ。
知恵先生は怒ったような表情から優しい笑顔になった。
「――クラスのみんなには適当な理由を話しておきます。
 ですからみなさんには沙都子ちゃんと叔父さんを任せましたよ。……いいですねっ?」
「「「「――はい!」」」」



……俺は、あれからずうっと不貞寝していた。
荒れたテーブルもそのままに、畳に身体を投げ出して。
……畳の上には、夕べ沙都子が払いのけたスプーン。
零れたソースの黄色が、目に痛かった。
…………畜生。

ピンポーン。
インターホンが鳴る。
きっと訪問販売かなにかだろう。
…………鍵はかかってないが、もうどうでもいい。
しばらく間があって、誰かが家に入ってきた。
みし…………っ。畳を踏む音と共に、声が振ってくる。

「…………叔父さん。」
「…………レナ、か。」
レナに背を向けて横になったまま応える。
レナも俺の背後に立ったまま続けた。
「――叔父さん、今日、沙都子ちゃんが学校で吐きました。」
「………………っ。」
「叔父さんに無理やりカボチャ料理を食べさせられたって、パニックを起こして、
 泣き叫んでました。」
「…………そうか。」
「……叔父さんが沙都子ちゃんのためを思ってやったことだけど、
 叔父さん焦りすぎだったんじゃないかな。
 沙都子ちゃんは今日は梨花ちゃんのお家で休ませてあげるから、
 その間にもう一度やってみよう?今度はレナも最後まで面倒見るから、」
「……もういいわね……俺はここで1人で暮らす。……それでいいわね。」
どうせ俺はやくざものだ。俺みたいな男が子どもと生活なんてできるわけなかったんだ。
「俺はここでこのまま野垂れ死ぬ。……その方が沙都子もきっと」

「しっかりしなさい北条鉄平っ!!」

レナの叫びが、俺の言葉をかき消した。慌てて身を起こしてレナを見る。
………レナは、この前のあの不思議な瞳で――泣いていた。

「一度失敗したから、それでもう諦めるの?
 沙都子ちゃんはモノじゃない、感情のある人間なんだよ!?
 たった一度ではい仲直り、なんてあるわけないんだよ?
 叔父さんにとっての沙都子ちゃんは、それくらいで諦めてしまうほどの存在なの?
 叔父さんはいいよ、悲劇に浸って諦めて1人で野垂れ死んでも。
 でも沙都子ちゃんは今回のことで深く傷ついてるんだよ?
 もう大切な人に頭を撫でてもらうこともできない、カボチャを食べることもできない、
 叔父さんが死んだら、誰がその傷を治してくれるの?
 自分のしたことぐらい自分で責任取りなさい、聞いてるの北条鉄平!?」
……俺はただ、一気にまくし立てるレナを呆然と見上げるしかできなかった。

俺を真剣に叱ってくれるレナ。
……玉枝みたいな感情任せじゃない、今はもういないお袋のように諭すように怒ってくれる。
その言葉のひとつひとつが、俺の中に浸透してゆく――。
「レナ……俺は、なんてことを……っ。」
俺の頬が、濡れている。……泣くことなんて、もうないと思ってたのに――。
「………………。」
俺を見下ろしていたレナが、俺の前に座り込む。
その瞳は、いつもの穏やかさを取り戻していた。
「叔父さん。……まだ、間に合う。もう一度、今度こそ、美味しいカボチャ料理を作ろう?
 もし沙都子ちゃんが嫌がったら、無理に食べさせないでまた次の日作ろう?
 沙都子ちゃんが自分で食べる気になるまで、ゆっくり、少しずつ。…………ね?」
「ああ。…………ありがとうね、レナ……。」

……もう少しで、「お袋」と呼んでしまうところだった。


……今度は焦らずに、じっくりと。
何日も何週間もかけて、レナは俺に根気よく料理を教えてくれた。
園崎の娘(本人は「ただの沙都子の友達の1人だよ」と否定したが)が、材料をわけてくれた。
沙都子は以前暮らしてた梨花ちゃまの家で、表面上は落ち着きを取り戻しているらしい。
「沙都子ちゃんなら大丈夫。叔父さんはレナと一緒に頑張って料理作りだよ。……だよ。」
……俺は沙都子を、こんなにあったかい「仲間」の元から、引き離してしまってたんだな…。

「……で、できた……っ。これで、どうね……?」
「…………うん、すごいよ、合格だよっ!」
やっとレナのお墨付きがいただけた。たった一品ではあったが、じっくりでいいんだ。
まず沙都子に食べてもらうことが第一だから。



「梨花ちゃん、沙都子ちゃん、こんばんは。……お邪魔してもいいかな?かな?」
「…………レナ。いらっしゃいなのですよ。」
「あらレナさん、こんばんはでございますわー。どうなさいましたの?」
「えっとね、新しいレシピにチャレンジしたから、食べてもらおうと思って。……はい、どうぞ!」
レナは夕刻、お皿を手に梨花ちゃまと沙都子の暮らす家を訪れた。
梨花ちゃまと視線を交わし、沙都子に料理を勧める。
「レナさんの手料理でしたら大歓迎ですわー☆さっそくいただきますわよ梨花っ!」
「にぱ〜☆」
さっそくテーブルにつき、レナの持参したお皿のラップをはがす。
ほわん……。まだ暖かいお皿から、ほのかに漂う甘い香り。
「………………っ。」
上機嫌だった沙都子の表情が変わる。
「………沙都子?」
「レナさん、これ……まさか」
「…………うん。カボチャのグラタンだよ。」
「う……………………っ!!」
口元を押さえ、逃げようとする沙都子の背中に、梨花ちゃまがしがみついた。
「沙都子………大丈夫なのです。よく見てくださいです。」
「………………あぅ…………っ。」
「沙都子ちゃん。これね……、沙都子ちゃんの叔父さんが作ったんだよ。」
「ひぃ……っ!」
梨花ちゃまの腕の中で、沙都子が震えだす。
「……怖かったよね。気持ち悪かったよね。でもよく見て?形はどうかな?」
「う…………っ、形は……悪くないです……っ。」
「匂いはどう?……気持ち悪いかな?」
「甘い…………。嫌な臭いではないです……。」
「叔父さんはね、沙都子ちゃんと仲直りしたかったんだよ。
 でも、早く仲直りしたくて焦っちゃったんだ。」
「焦ったからって……あんな酷いことをするんですの……?」
「もちろん、沙都子ちゃんに嫌な思いをさせていいはずがないよ。
 レナが怒ったら、叔父さんは反省してた。……叔父さん、泣いてたんだよ。」
「叔父様……………が、」
「うん。叔父さんね、沙都子ちゃんに今度こそ美味しいカボチャ料理を食べてもらおうって
  頑張ったんだよ。
  これね、レナも食べたけど、すごく美味しかった。保証するよ。」
「…………ほんとう……ですの……?」
「ボクにも一口くださいです☆」
梨花ちゃまが沙都子を包み込むように抱き締めながら、レナに向かって口を開ける。
レナがスプーンですくってその口に入れてやると、嬉しそうに頬張った。
「…………甘くってほこほこしてて美味しいのですよ☆もう一口欲しいのです〜。」
レナは催促に応えて、何度も梨花ちゃまに分け与える。
本当に嬉しそうに食べる姿が微笑ましかった。
「………………っ。」
「……沙都子ちゃん。無理強いはしないよ。食べられないようだったら、
  梨花ちゃんに食べてもらって。
 辛いようだったらこっちのお皿にレナの作った普通のグラタンも入ってるから。」
「…………い、ですわ。」
「………………え?」
「梨花ばっかり、ずるいですわ☆私にって作ってきたんじゃないんですのっ!?」
「………………沙都子ちゃん。」
「ボクが独り占めできると思ったのに、残念なのですよ☆」
ちっとも残念じゃなさそうに笑いながら、沙都子から手を離す。
「あーん、ですわ。」
瞳を閉じて、口を開く。レナはその口元に少なめによそったスプーンを運んでやる。
もにゅもにゅ……。ごくん。
「…………甘くて美味しいですわ。言われなきゃカボチャだってわかりませんですわよ☆」
「…………沙都子ちゃんっ!」
「にぱ〜〜〜☆」
沙都子の笑顔に、レナも梨花ちゃまも……そして俺も、頬がゆるんだ。

「……叔父様、そこにいらっしゃるんでしょう?顔をお出しあそばせ〜!」
………………っ!!
「さ、沙都子ちゃんっ……。」
「…………出てくるのですよ、鉄平。」
「…………いつから気付いてたんね。」
おずおずとふすまの陰から顔を出す。
「最初っからですわ。叔父様の図体でかくれんぼだなんて無理な話ですわよ☆」
憎まれ口が、嬉しかった。
「…………私やレナさんの域にはまだまだでしょうけど、
  このグラタンは食べられる方でしたわよ☆」
「そうか……よかった……。」
あんまり嬉しくて、ホッとして、ついその頭を撫でようと手を伸ばしてしまって。
「………………っ!」
びくんと身をすくめる沙都子に気付いて慌てて手を引っ込めた。
「……あ、悪いっ!…………嫌がることはしないから、怯えないでくれんね……っ、」
……いけない。料理を食べてもらえたからって、笑顔を向けてもらえたからって、
心の傷が癒えたわけではないのだ――。

「………お、叔父様。…………どうぞ……ですわ。」
「沙都子ちゃん……っ!」
「沙都子………っ!」
「………沙都子。」
ぎゅっと瞳を閉じ、頭を俺に差し出す沙都子。
その必死さがたまらなく愛しくて、俺はそおっとその頭に触れた――。
「さ、沙都子、……大丈夫か?怖くないか?」
「叔父様…………っ。」
ぽろり。閉じた瞳から、涙が零れる。
…………やっぱり、まだ駄目なのか……?
じっくりでいい。今日一日でここまで俺を受け入れてくれただけで充分だ――。


「どうかそのまま、手を離さないでくださいまし。
 ……にーにーに撫でられてるみたいにあったかいですわ……。」

「叔父さん、沙都子ちゃん、よかったね……!」
「鉄平、ゆでだこみたいに真っ赤なのです。にぱ〜☆」


――俺は鉄平。
一度は逃げ出し、そして逃げ帰ってきたこの村で、
血の繋がらない姪っ子と、その友人と暮らすことになっちまった。
だがその生活は、今までにないくらい幸せな、穏やかなものになるに違いない――。







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