私はこの瞳で、嘘をつく。


ここは私だけの場所。
誰にも汚されない聖域。
ここにしか私の居場所はない。

……偶然立ち寄った喫茶店で、父が食い物にされていることを知った。
私の居場所を奪った上に、さらに奪いつくすというの!?

大丈夫、まだ時間はある。
なんとかして敵を排除しなくてはならない。
それにはまず敵を知ること。
葛西さんに連絡を取ってもらうよう詩ぃちゃんに頼んでみよう。
大丈夫、まだ間に合う。
慌てずじっくり計画を練らなくては――。

「礼奈ちゃん、いるー?ちょっと出てきてくれないかなー?」

誰もいないはずの不法投棄所に、不快な声が響き渡る。
―――――あの女だ。
あのやくざな男と一緒になって父を食い物にしている女が、私の聖域に踏み込んできた。
「………は〜い。リナさん、どうしたんですかー?」
ゴミの山の影から、いつもの私をまとって登場。
……おかしい。いつものご機嫌を伺うような表情がない。
「礼奈ちゃんの秘密の場所に来ちゃって悪いんだけど、ナイショで話したいことがあってさ。」
ナイショで、私に、………何の話を?
「――もう知ってんでしょ、アタシとアタシの相棒のこと。」
「……………っ。」
この女――――私が気付いたことに気付いてる!
私が唯一彼らより有利だったこのことに、気付いてる…!
――どう出てくる?私を排除?……そうはさせないんだから!
「………葛西、知ってるでしょ。」
「――――――はい……。」
「あの時喫茶店で礼奈ちゃんに見られていたとはね…悪いことはできないってやつか。」
「――葛西さんに、聞いたんですか。」
様子のおかしい私に気付いて、色々調べてくれちゃったんだろう。
ウチの事情とあいつらを結びつけて考えれば、
危うい状態であることぐらいすぐにわかるだろう。
………しまった、と思った。
「……アタシの相棒、葛西の監視下で働かされることになった。
 一発殴られただけで済んだのは園崎のお嬢ちゃんの計らいだろうね。」
――あの男が、ウチに来ない――美人局が成立しないということ?
それじゃあ、お父さんはどうなるの――?
「………これ。お父さんに返しておいてくれるかな。」
中身がぎっしり詰まった大きな茶封筒。何が入ってるかは言われなくてもわかる。
母が残した、父が貢いだ、将来のための蓄え――。
「――本当は直接渡して謝るべきなんだろうけどさ、
 ……美人局だって知ったらきっと壊れちゃうから、あの人。
 もう雛見沢には近付かない。あんたたち親子にも。
 ――リナは故郷で不幸があって、家を継がなくちゃならなくなったって伝えて欲しい。
 …最後まで騙すようで悪いけど、アタシの最後のお願い。」
騙す……嘘……嫌な言葉。
「――私に、嘘をつけって言うんですか…。」
「――礼奈ちゃん。あんたは嘘が嫌いなんだね?
 たとえ傷ついても本当のことを言うべきだって思ってるんだね?
 でもね礼奈ちゃん。「本当のこと」はたった一つじゃないんだよ。」
「……なんですか、それ。」
私は「礼奈」じゃない。お父さん以外の人に、その名で呼んで欲しくない――!
「――たとえば、さ。アタシはあんたのお父さんと金のために寝たよ。
 金のためだから、愛情なんてない。
 でもさ――アンタのお父さんを愛しく思う瞬間は確かにあった。
 カモへの同情じゃなく、恋人に抱くような感情が、確かに。」
「―――嘘だ。」
信じられない。人を家畜にしようなんて女に情なんてあるわけない。
「嘘だって思うよね。でも、本当の気持ちだから。」
「ウソだ……。」
「――まあ、アタシみたいな擦れた女の気持ちなんてわからなくたって当たり前だよね。
 ……本当のことを話すか嘘をつくか、あんたの好きにしていいよ。
 葛西をたどればアタシらを警察に突き出すこともできるからさ。」
「………………っ。」
「――それじゃ。永遠にさよなら。……これは本当だからね。」
「―――さよなら。」
そう言うと、私に背を向けて歩き出す。
去ってゆく背中に、この女がウチにいた頃のことが浮かんで、消えた――。

目的が何であれ、父は明るくなった。
娘の私には無理だった、頑なな父の心をを開放することができたのだ。
私が逃げ出したあの家は、それでも確かに暖かかったのだ――。

「――リナ、さん。」
「……アタシをまだ、さん付けで呼んでくれるんだ。」
背を向けたまま、それでも明るい声で。
「私……嘘は嫌いです。嘘は、不幸しか招かないから。
 でも……父には嘘をつきます。リナさんやリナさんの仲間のことも内緒にします。
 父が幸せでいるための嘘だから。」
「………ありがと、……ナちゃん。」
しばしの沈黙の後、本当に小さな声で呟いた。
「最後にひとつだけ言わせてね。」
「………なんですか?」
「あんたさ、昔のアタシにどこか似てたんだ。…アタシみたいになっちゃ駄目だよ。」
「………嘘だ。」
「――あはは、言うと思った。」
最後まで振り向かずに、私の場所から、リナさんは消えた。
悪い――けれど甘ったるい夢だったみたいに。


「ただいま――。」
「礼奈………、リナさんと会わなかったか……?」
出迎えてくれた父は、まるで焦がれ死にしそうに憔悴していた。
リナさんとたった一日連絡が取れない、ただそれだけで、
愛するものを失う絶望感が彼を包みこむ。
……確かにこんな父に本当のことを話したら二度と立ち直れやしないだろう……。

憐憫、軽蔑、思慕……いろんな思いで父を見ながら。
「お父さん、実はね、リナさんね………、」

私はこの瞳で、嘘をつく。








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