生贄の夜〜拒絶の裏側〜


もうすぐ父が*ぬ。そして母も*ぬだろう。
何度迎えても哀しい別れ。
私はそれに慣れるしかなかった。
いちいちそれを受け止めていたら、私は壊れてしまうから。
いちいち掌の上で踊らされるなんて、私は御免だから。
―――だから。

私とあなたは他人。
他人に何をされたって、他人がどうなったって、私は知らない。
ぶたれた頬の熱さなんて、知らない。
出された料理の美味しさなんて、知らない。

いろんな言葉で傷つけて、
いろんな態度で拒絶して。
それでも彼女は私を理解しようと努めた。
そのたびに、胸の奥がちくりと痛んだ。
――それももう、おしまい。
彼女が私との会話を書き記すだろうことはわかってる。
―――だから。


い 
チ 
い 
ち 
ウ 
ル 
さ 
い 
な 


――ほら。わかったでしょ?
私はあなたを認めてないの。
だからあなたも私を「娘」だと思わないで。
私は「オヤシロさまの生まれ変わり」。
それなら仕方ないって思えるでしょう?

「さ………、……さん。」
だから。
「さよなら、おばさん。」
お願いだから、早く消えて。

ガタン。虚ろな目の彼女が、よろよろと家を出てゆく。
祈るように呟く声から逃れるように、私は耳を塞いでしゃがみ込んだ。
「梨花………りか……りかを、かえして……おねがいです、オヤシロさま……」
私を求める声なんて、聞こえない。
大好きだった母の声なんて、聞こえない。
後を追いかけ、抱きついてしまいそうになるのを必死に堪えた。

どれくらいそうしていただろうか。
――もう、事は済んだだろう。
すっくと立ち上がり、いつの間にか流れていた涙を拭う。

遺品だけど、これは遺しておけないから。
灰皿の上で、ちぎったノートを燃やしてゆく。
たった数ページだ。すぐに燃え尽き、その炎もあっけなく消えてしまった。
――母の、儚い命のように。

その名残の煙が目にしみて、涙が零れた。

「さよなら、………おかあさん……っ。」






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