ファミリー〜祟殺し編・沙都子救済計画〜律子編


鉄平が雛見沢に帰ってきてから、北条家に再び明かりがともるようになった。
けれどその明かりは、暖かいものではなかった――。

「おう、沙都子っ!!なんしとるねっ!早く酒買ってこんねっ!!」
「は、はい……っ!」
真昼間から響き渡る鉄平の怒号に、沙都子は怯えながらも急いで玄関の扉を開けた。
――――ひらり。
「――――――――?」
扉に挟んであったのだろう、沙都子の足元にひらひらと封筒が落ちてきた。
「手紙……ですわ。あて先は――」

「あの、……叔父様。」
「あぁ!?何でまだ家におるんね!?早く酒……、」
「叔父様に、お手紙ですわ。――律子……って方から。」
鉄平の目が見開かれ、沙都子の手から慌てて封筒を奪い取る。
「…沙都子は早く酒を買ってこんね。」
「は、はいっ、……行ってきます……っ。」


かさ……。
便せんから、ほんの少しだけ、律子の香水の匂い。
今はもういない、律子の――。
「――そう、律子は殺されたんね。」
ヤバい山に手を出して、制裁を受けて。
俺を見捨てて、1人で先走って死んだ律子――。
「俺を捨てたバチが当たったんね……。」
畜生。俺がここでこんなに荒れてるのに、お前はなだめに来ねぇ。
なんだってあんな無茶なマネをしたんね……?
俺と一緒の「仕事」はイヤだったんね……?
なんらかの「答え」が書いてあるだろう便せんを広げ、読み始める――。



『――鉄っちゃんがこの手紙を読んでるってことは、私はこの世にいないってこと。
 私に何かあった時だけ、この手紙を届けてもらうように手配してあるから。
 ……できればそんなことになって欲しくないけど、その可能性が高いから。』


――はじめは、「食い物にできるかな。」って、そう思ってた。
なんか身内が死んで遺産があったらしいから。
いつものように甘い顔して近付いて、搾り取ってやろうって。
……けど、蓋を開けてみりゃなけなしの遺産を食い潰すロクデナシだった。
まあいいや。ロクデナシ相手ならそれなりのやり方で、一緒に組んで稼いじまおう。
ある程度稼がせてもらったら、とっととトンズラ。そう思ってた。
それなのに―――。

顔はいかついし、彫り物はあるし、みたまんまのどチンピラ。
好みからは外れっぱなしなんだけど。

「――鉄っちゃん。次はどのカモにする?……店の客でよさそうなのがいるけどぉ?」
「――いや、まだいいわね。」
「えー、なんでぇ?」
「美人局はなぁ………しばらくええんよ。」
ごにょごにょと口ごもる。
でもすぐ顔に出るあんただもの、本心はすぐにわかった。
「――妬いてるんだ、鉄っちゃん。」
「――ばっ!………………ああそうよ、文句あるんね?」
「………文句なんて、ないよ。」

私さ、あの時嬉しかったんだよ。


付き合ってるうちに、典型的な「ひねくれ次男」だってわかってきた。
本当はそんなに悪いことのできる男じゃないんだって。
素直になれず、意地だけでここまできちゃっただけ。
本当はこんなこと良くないって、わかってるんだね。

――私はあんたみたいな優しい男とは違う。
目的のためならなんだってできる。なんだってしてきた女だ。
だけど――。

私さ、鉄ちゃんと2人で生きたくなったんだ。
こんなやくざな世界から抜け出して、誰も私たちを知らない世界でやり直したい。
――それには、金が要る。
あんたの彫り物を消して、関わっちまった裏社会のしがらみを逃れるには、
かなりの大金が――。

鉄っちゃんは弱虫だからね、代わりに私がごっそり稼いであげるよ。
2人の門出のために、頑張るからね――。


『――だからちょっと無理しちゃったけど、許してね。
 バカな女だって思って、どうか忘れて。
 見る目のある女は、私の他にもきっといるから。
 だから、……どうか真っ当に生きて。
 バカな女の、たったひとつの願い。きいてくれたら、嬉しい。』

「――――律子………っ!」
手紙を持つ手が、小刻みに震える。
俺は、見捨てられたんじゃなかったんだ。
俺との未来のために頑張ってくれてたんだ。
それなのに、俺って奴は……っ!


『笑わないでね、私……鉄っちゃんの赤ちゃん、欲しかった。』


「うおぉ……っ、おぉおぉぉおおおお………っ!!」
バカなのは俺だ。俺の方だ。
お前を信じず、裏切られたと思い込んで、勝手に恨んで憎んで。
お前が死んだ時も流せなかった涙を、いまやっと流したって、もう遅い。
いいか、律子の命懸けの最後の願い、きいてやれなきゃ男がすたるぞ!
涙を拭け、立ち上がれ!そしてクールになれ、北条鉄平!!


「鉄平が変わった」
村中はその話題で持ちきりだった。
相変わらずの強面だが、それでもぎこちない笑顔を必死に作って話しかけてくる姿は
なかなかに可愛いと村の老婦人たちには密かに好評のようだ。
さすがに沙都子とは打ち解けられるまで時間がかかったようだが、
最近では照れくさそうに手をつないで一緒に歩く姿も見られるようになった。
沙都子の希望で梨花まで北条家で暮らし始めた時は、村の老人たちも大騒ぎ。
のちに「鉄平シンドローム」と呼ばれるほどの騒動となったのはまた別の話。

「見てるか律子ぉ。俺は真っ当に生きとんね。
 沙都子も梨花ちゃまも、お前との子どものつもりで可愛がっちょるけんねぇ。」

北条家の明かりは、今はとても暖かい――。







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