ファミリー〜祟殺し編・沙都子救済作戦〜留美子編


留美子編 〜もう勘弁してください〜

 月女臣(伏字)未プレイゆえの、ある種独特の風味漂うシナリオです。
 彼女には誰も勝てないことでしょう。



「叔父様、腕によりをかけて作ったカレーですの…召し上がってくださいませ。」
「あー?……おう。」
珍しく笑顔の沙都子に面食らい、あっさりと皿を受け取る。
ちょうど腹も減っていたし、食ってやるくらいいいだろう――。
スプーンにたっぷりとルーとライスを掬い上げ、口へ運ぶ。
………………。
「☆♂♀◆○△√π÷@pkgfdぇrvcghbjmっっっ!!!!!」
ななななななんだこの不協和音はっ!?
口の中で生臭いものが粘つくかと思えば舌の上でほろりと溶けてゆく甘味。
次の瞬間には鼻につく刺激に涙が止まらない。
「――お味はどうですか叔父様?」
「………………こっ、」

「ごめんくださーい。」
玄関に立ち、中に声をかける留美子。――しかし返事はない。
この時間に家庭訪問をするように言われているのに――。
「………失礼、しますー。」
田舎は無用心ねえ。そう思いながらもこの暑い中外にいなくて済むのなら…と
施錠の習慣のないこの村の恩恵に預かり、中へと入る。
奥の方で人の気配。
――まさか、また沙都子さんが虐められてるんじゃ…っ、
「――失礼しますっ、私、雛見沢分校の――…」
「こんなクソまずいカレーが食えるかっっ!!」
「―――――――――――っっ!!」
部屋に足を踏み入れた留美子が見たものは、
カレーを罵倒しながら皿をひっくり返す、鬼のような形相の鉄平と
スローモーションで無残にも床にぶちまけられてゆくカレー――。
「――おう沙都子っ!!なんだこのゲロまずいカレーはっ!!
 こんなカレー、人間の食べるもんじゃねえぞ!
 よくもオレ様にこんなもん出せたもんだな!?」
萎縮する沙都子の襟首をつかみ、平手打ちをしようと手を振り上げる――。
「――――あぁ!?」
鉄平の腕に、留美子の華奢な指が触れた。
「――その手をお放し、下衆野郎。」
「――んだとぉ?…おめー、沙都子の先公か。このオレ様に向かっていい度胸だな。」
「――それはこちらのセリフです。
 この私の前でカレーの悪口を言うなんていい度胸ですね――。」
指で押えられた腕はいくら力を込めてもびくともしない。
――なんだ、こいつ……っ。
「カレーを蔑ろにしたことを、後悔させて差し上げます。」
ぱ。と指を放すと、勢い余った鉄平が倒れる。起き上がろうとしたところへ、
留美子が容赦ない攻撃を仕掛けてきた―――!
「(伏字)っ!(ボカシ)、(モザイク)っ!…(検閲削除)――――っっ!!」
「んぐわああああぁぁぁぁぁああああぁぁああぁぁぁぁっっっ!!!」
汗だくで息も切れ切れ、ズタボロの鉄平の前でにやりと笑みを浮かべる留美子。
――瞳の輝きが尋常じゃない。
鉄平は今まで感じたことのない死への恐怖を感じていた――。

「カレーをバカにする者はカレーに泣くといいます。
 厳粛たるカレーの尊さを軽んじるなんて、カレーの中の林檎と蜂蜜より甘いです。
 沙都子さんの黄色い髪は昔ながらの黄色いカレー。
 赤い瞳は福神漬け。緑の制服はココナッツ・カレー。
 黒いヘアバンドとタイツはブラックカレー…。
 まさにカレーの化身である沙都子さんに対してなんて不躾な!
 あなたのような不届き者に沙都子さんは任せられませんっ!!」
――留美子の攻撃が再び繰り出されようとしたその時、
「――お待ちくださいませ知恵先生っっ!!」
留美子の前に立ちはだかり、涙ぐみながら制止する沙都子。
自分を庇うように立つその小さな背中を呆然と見つめる鉄平――。

「叔父様がカレーの悪口を言ったのは私のせいですのっ!
 私が美味しいカレーを作れなかったのがいけませんのっ!
 ですからどうか、命だけは……っ!」
「沙都子……」
「沙都子さん……」
ほろり。留美子の瞳に涙が滲む。
「――なんて心優しい神々しいいい子なんでしょう。
  ……わかりました。沙都子さんの優しさに免じて命だけは助けてあげましょう。
 そのかわり、あなたには修行に出てもらいます。」
「――しゅ、修行、だとぉ?」
「全国のカレー屋を回って、その味の奥深さを体感していらっしゃい。
 その間、沙都子さんには私たちが美味しいカレーの作り方を会得させます。」
鉄平と沙都子を交互に見つめて宣言する。
「――いいですねっ!?」
鉄平は気迫に威圧され、渋々頷いた。
「――では、しばらく私たちに沙都子さんのお世話を任せると書面に認めてください。
 後でどうこう言われたくはありませんから。」
言われるままに仕上げた書面を受け取ると、いつもの涼しげな表情の留美子に戻った。
「――私がここで見ていて差し上げますから、荷物を纏めてくださいね。
 きちんとお見送りするまで帰りませんので。」
…元々荷物は少なかったので、日も暮れる頃には荷造りも終わった。
留美子と沙都子に見送られて立ち去ろうとした鉄平が、ぽつりと呟いた。
「――沙都子。」
「――は、はい?…なんでございますの?」
「……美味いカレーを作れるようになれよ。」
「―――はい!」
ほんの少しだけ上がった口角を、沙都子は見逃さなかった。
「叔父様も、頑張ってくださいませ…!」
鉄平は背中を向けたまま、軽く片手を挙げて去っていった――。

「――沙都子さん。」
「――はいっ、なんでございましょう…?」
「私を利用しましたね?…おそらく前原くんや園崎さんたちの入れ知恵でしょう。
 ――見てるなら出てらっしゃい!!」
………………。
「…やっぱりバレましたね。ちょっと無謀だったかなー…。」
「――はう〜、ごめんなさい、ごめんなさい……っ。」
「……圭一を許してやって欲しいのですよ。」
「…つか、俺だけなのか?梨花ちゃんっ」
おずおずと出てくる部活メンバー。相当の覚悟はしていたようだ。
「――ここまでしなくちゃならないほど追い詰められていたのはわかります。
 確かに、事前に私に話していたらこうまで自然にはいかなかったでしょう。
 結果オーライなのかもしれませんね。
 …私も沙都子さんのことはずっと気掛かりでしたから。」
「「「「「―――あの、先生……っ、」」」」」
「………カレー。」
「「「「「はい?」」」」」
「カレー1年分。それで目をつぶります。それから、」
みんなに守られている沙都子を見て微笑む留美子。
「これから沙都子さんに美味しいカレーの作り方を伝授させます。
 皆さんもそれに協力すること。――いいですね?」
「「「「「………はい!!!」」」」」

それからずっと、鉄平や悟史が帰ってきて後もずうっと……、
雛見沢に香ばしいカレーの匂いが絶えることはなかったという――どっとはらい。








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