最後の願い。
私は、ひとり。
暗闇の中、たったひとり。
何も見えない。何も聞こえない。
――私が、拒絶してしまったから。
何も見ようとしないで。何も聞こうとしないで。
間違った想いに囚われたまま、自らすべてを切り捨てて、そして私はひとり。
――悟史くん……。――
会いたい。せめてもう一度。
見たい。せめて一目でも。
聞きたい。せめて一言だけ。
あの頃と変わらないあなたが、あの頃と変わらない姿で、あの頃のように「……むぅ。」と。
赤くなって、困ったように。
「仕方ありませんね。悟史くんは私がいないとダメなんですから。」
――だから、私の前からいなくならないで。
こんなことになってしまうなら、せめて私が叔母を*してしまえばよかった。
私は、鬼だもの。
*すくらい、もう何でもないもの。
叔母を*せば、悟史くんはきっといなくならなかった。
悟史くんさえいてくれれば、きっとこれ以上手を穢すこともなかった。
鬼婆、公由のおじいちゃん、梨花、沙都子、詩音、圭一………。
6−1=5。
なあんだ、最初からこうしていればよかったんだ……。
――悟史くんは、きっと喜ばないけれど。
それじゃあ。
私はどうすればよかったの?
ただ沙都子と一緒に、悟史くんを待っていればよかったの?
そうしたら悟史くんは帰ってきてくれたの?
――いくら後悔しても、もう遅いのに。
――助けて。
ひとりにしないで。
私をいらない子に、しないで。
ねえ。
悟史くん。悟史くん。
悟史くん。悟史くん。悟史くん。悟史くん。
悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん
悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん
悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん悟史くん
悟史くん悟史くん悟史くん………。
頭が、痛い。
「私」は、もうダメ。
ここは、どこだっけ……?
私は、落下していた。
鬼となった私は、地獄へと堕ちてゆく。
人のいるこの世界へ、……悟史くんへ、別れを告げて。
じゃあね。
大好き。
「…むぅ。」
え?
――――え?
悟史くん―――――!!
あの頃と同じ、姿は見えなかったけど、困ったような、大好きなあの声。
………ありがとう。
鬼の棲む世界へと堕ちてゆく私の、人としての最後の願いを叶えてくれて………。
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