まほうのて。

「――それでは赤坂。また明日なのですよ。」
――あなたに明日があればだけれど。
にぱ〜☆
私は明るく笑ってみせる。
……私はちゃんと忠告した。
それを信じずここにい続けるのなら、せめて私の笑顔を覚えていて欲しい。
理不尽な「死」を迎えるその時に、この雛見沢の風景と共に思い出して欲しいから。
「――うん、また明日ね、梨花ちゃん。」
ふわ……。赤坂の手が、私の頭に触れる。
母は気味悪がり、村の老人は崇めるだけで触れることのなかった私の頭を優しく撫でる。
………………。
あたたかい………。
私の中の負の感情が溶けてゆくのがわかる。
それがとても心地よかった――。

赤坂の活躍で、誘拐事件は解決した。
――あくまで表向きは、ではあるけれど。
確率を無視して、彼はここで生きていられた。
ひょっとしたら、もしかしたら、彼なら「予定」を変えてくれる――?
私は、祈りを込めて、小さな小さなお願いを、した――。

――赤坂は、帰っていった。
そして大切なものを失ったことを知るだろう。
彼の心を、哀しみを和らげてくれるのは小さな忘れ形見。
――私じゃ、ない。
彼の手は、優しく彼女の頭を撫でる。
――私じゃ、ない。
やがて成長した娘は、彼の頭を優しく撫でる。
――私じゃ、ない――!

――赤坂。
それでも私は嬉しかったから。
あなたの手があたたかかったから。
傷が癒えて、私を思い出して、またここに来てくれるまで。
私は―――。


「…こら沙都子っ!まーた姑息な手を使いおってからにっ!!」
雛見沢分校に、今日も圭一の怒号が響く。
彼が転校してきてから、一段と騒がしくなった。
消えかかった蝋燭の炎が最後の輝きを放つように、
短い一生を終えるひぐらしが必死に身体を震わせ鳴くように。
より強い結びつきで精一杯生きてゆく私たち――。

―――………。
悲劇は、もうすぐ起こる。
沙都子との生活も、もうすぐ終わる。
「こんな子どものトラップにまんまとハマる圭一さんが悪いんですのよー!
をーっほっほっほっ!!」
この勝ち誇った眩しい笑顔も、もうすぐ消えてしまうのだ――。

むにゅ。
「ふひゃっ!?」
「そんな小生意気なことを言うのはこの口か?この口か――?」
「いひゃいいひゃいっ!ひゃめてくらひゃいまへっ!!」
「おー、よくのびるほっぺだな〜〜♪」
「うわぁ……のびのびー、むにゅむにゅー…。沙都子ちゃん、かぁいいよぉ〜〜」
「ひゃーーーん、レナおねーひゃまぁ、たすけへくらはいれふのーーーーっ!」
『おねーひゃまぁ、おねーひゃまぁ、ひゃまぁ、まぁ、まぁ………(エコー)』
ひゅん、ばしっっ!!
「ぉぐおっっ!?」
一瞬の閃光の後、床に倒れる圭一。これもまた予定のひとつ。
……お約束、ともいうけれど。

「沙都子ちゃん、もう大丈夫だよぉ?うにゅ〜〜、これでレナがお持ちかえ、」
「おーーーっと、レナっ、お持ち帰りはダメだかんね?
……圭ちゃんも学習しないねーー。」
「ふえぇええぇえぇえ……っ!ほっぺが真っ赤ですのっ、美貌が台無しですの〜〜!」
――さて、「ボク」の出番です。
「――沙都子。もう泣かないのですよ。」
ふわ……。沙都子の小さな頭を撫でる。
気持ちよさそうに目を閉じて、泣き止む沙都子。
悟史にそうされていた時のことを思い出しているのだろう。
私が頭を撫でながら、赤坂のことを思い出しているように。
「――今度はもっとすごいトラップをお見舞いして差し上げますわ圭一さんっ!
覚えてらっしゃいませーーーーー!」
立ち直った沙都子が床と口付けしている圭一を見下し、高らかに宣言する。
「――圭一も、なでなでなのですよ。」
彼のそばにしゃがみこみ、頭を優しく撫でる。
「梨花ちゃんは、優しいなぁ…。」

――赤坂――
私は最後の最後まで、赤坂を忘れない。
彼がしてくれたように、大切な人たちの頭を撫でて、
少しでも哀しみを癒せたらいい。
そして最後の最後に、赤坂の手の温もりを思い出す。
最後の最期まで、赤坂を待ち続ける。
それが定められた運命への、ちっぽけな私の精一杯の抵抗だから――。



幸せな日常に、突然の来訪者。
けれど、それは―――

「――遅くなってすまなかった、梨花ちゃん。」
「――遅刻なのですよ赤坂。……でもまだ間に合うのですよ。」
彼の手が、頭を撫でる。
あの時と同じ――いや、それ以上に頼もしい、あたたかい手。
今の彼なら、大丈夫。……この手があれば。
私だけじゃない、大切な仲間も、雛見沢だって、任せられる――。

「――ありがとう、なのです。」







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