「母と少女と偽りの魔女。」


窓を叩く雨の音。風も相当強そうだ。
屋敷に入ってからもしばらくぼんやりしていた私は、その激しい音に握ったままだった右手を開く。
掌は赤く、熱を持っていた。あの子の頬を打った掌――。
「うーうーうーうーうー!!!うーうーうーうーうーうー!!!」
「だからそのうーうー言うのをやめなさいッ!!やめろって言ってんでしょ!!」
あの子の口癖が耳障りでならなかった。あの子の必死の訴えを、拒絶した。
親族会議を前にしていつもより神経過敏になっていたのかもしれない。
だけど、あの口癖のせいで、あの子は馬鹿にされているのだ。
クラスで孤立しているのだ。……右代宮家での私のように。
私のようになる前に、器用に世の中を渡ってゆけるように、どうにかして矯正しなければいけない。
だけど、駄目だった。
頑ななあの子の心は、私では解きほぐせなかった。
あのままあの子の側にいたら、また叩いて叫んで、さらにあの子を自分の殻に閉じこもらせてしまう。
だから私は逃げ出した。必死に何かを訴えるあの子の前から。
「真里亞……」
掌が、熱い。あの子はきっと、この風雨の中、今も薔薇を探しているのだろう。
ありもしない薔薇を、うーうー言いながら、必死に…。
「真里亞……!」
私は傘を手に、屋敷を飛び出した。

「うー、……真里亞の、薔薇……どこ……?」
「――真里亞」
雨の中。地べたにしゃがみこみ、ひたすらに薔薇を探す真里亞に、声をかける。
「うー、……ママ……?」
「いいえ、私はあなたのママでは――右代宮楼座ではありません。」
「ママじゃ、ないの?……うー、だって……」
「私は、ベアトリーチェ。訳あってこの者の身体を借りています。」
「ベアトリーチェ…?本当に、ベアトリーチェなの?」
「真里亞は私の存在を信じているのでしょう?」
「うん!ベアトリーチェ…!」
『魔女』の言葉に本当に嬉しそうな笑顔を向けてくる。
この笑顔が、自分に向けられたものだったら――!
だけどそれは自業自得。この子に対して私がしてきたことへの、報い。
「真里亞、この傘をお使いなさい。……探し物が見つかりますように。」
「うん、ありがとうベアトリーチェ!」
眩しい笑顔が、胸に痛い。
「楼座は、私がこの身体を借りていることを知りません。ですから――」
「うー、わかった!ママには内緒にする!」
『魔女』の言うことなら何でも信じる。何でも従う。
きっと『魔女』がやめろといえばこの口癖もやめてくれるかもしれない。
でも『真里亞の魔女』はそんなことは言わないだろうから。
「私はいつでも真里亞の側にいます。あなたを愛する者がいます。それを忘れないように…。」
「うん!」
真里亞は『魔女』の指示に従い、背を向けて薔薇を探し始めた。
傘を差していればしばらくは大丈夫だろう。
屋敷に戻って、何も知らない振りをして、それから真里亞を探しにゆこう。

客室のソファーは、私の疲れた身体と心を大きく受け止めてくれた。
少しだけ、休ませて…。泥のような睡魔に誘われてまぶたを閉じる。
…真里亞は、本当に私を『魔女』だと信じただろうか。
私が傘を貸した人物について尋ねたら、なんと答えるだろうか。…予想はついているけれど。
この先、またあの子と衝突して素直になれなかったら、私はまた『魔女』になろう。
『魔女』としてなら、私はきっと素直になれる。
――ベアトリーチェが“い”れば。









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