沙都子とにーにー、空の上。


永遠に続くかと思った痛みが消え、私はふわりと肉体から離れた。
にーにーを想いながら、にーにーのいるだろう空を飛ぶ。
あの暗い地下室とは全然違う雛見沢の高い空。
そこには、両手を広げたにーにーが、いた――。

その胸に飛び込んだ私を優しく抱き締め、頭を撫でてくれる。
暖かい……。本当の、本物の、にーにー……っ!
「にーにー!逢いたかった…ずっと待ってたんですのよ、にーにー…!」
「沙都子。……強くなったね。頑張ったね。
………でも、もう泣いていいんだよ。」
「………ふ、ふわあぁあぁ……っ、にーにー、にーにぃぃ……っ!」
寂しさと辛さと痛さと怖さに耐えて、堪えてきた涙。
今はすべてを洗い流してくれる、心地よい潤い。
「これからは、ずうっと一緒にいられるんですのね…!」
「………むぅ。」
………?にーにーの笑顔が、ちょっとだけ翳る。
「………にーにー?………何かあるのでしたら遠慮なく言ってくださいませ。
私はもう、にーにーにこれ以上自分を抑えて欲しくないですわ。
――私は、大丈夫ですから。」
「沙都子………本当に、強くなったんだね。」
くしゃっと頭に手を置き、照れたように撫でてくる。
「………少しだけ、待っててくれないか?」
笑顔が消え、真剣な表情。私もにーにーの目を見てしっかり聞く。
「詩音のところに行ってくる。」
「………え?」
どうして…?なんであんな人のところに?
私や、梨花や、魅音さんたちをあんな目に遭わせたあの人のところに、どうして!?
私の心が表情に出ていたのだろう、にーにーが諭すように言う。
「詩音が沙都子やみんなにどんな酷いことをしてきたかは、知ってる。
どんな理由があったって、人を殺めていいはずがない。
犯した罪の分だけ報いがあるのは知ってる。だけど――」
にーにーの瞳が、潤む。
「それは僕を想ってのことだったんだ。」

詩音は悪人じゃない。正しい道を選べなかった。ただそれだけなんだ。
「あの時」、僕が選ぼうとしていた道のように。

詩音は苦しんでる。後悔してる。迷ってる。
でも間違ったことに気付いても、進んできた道はもう引き返せない。
このまま進むしかできない、そんな地獄。
心を鬼にしないと堪えきれない、とても進めない、そんな道――。
「終わり」は近い。もし詩音が少しでも人の心を、
僕が知っているあの「詩音」の心をまだ持ってくれているなら、
今はとても弱い存在の僕でも、きっとわかるはず。
せめて最後に、彼女がただひとつ望んでいた再会を。

――そこまで言うと、頬を伝う涙を拭い、私の両肩に手を置いた。
「………僕は、必ず戻ってくる。「鬼隠し」に遭ったりしない。約束する。」
「――あの人は、」
「……………え?」
「私を斬りつけながら、あの人はずっと、………にーにーを呼んでましたわ。
『悟史くん』『悟史くん、どこ?』『悟史くん、助けて』『怖いよ悟史くん』『悟史くん』……。
私にはこうしてにーにーが迎えに来てくれたけど、あの人はずっとにーにーを…。」
あの人は、きっと、ここには来れない。
想う気持ちは同じだったのに、道を間違ったせいで、あの人だけ――。
肩に置かれた手に、そっと手を重ねる。
「私はもう、泣き虫沙都子じゃありませんわ。今はあの人の方が泣き虫ですわ。
今だけにーにーを貸して差し上げてもよろしくてよ。」
「沙都子………ありがとう。」
「……ねえにーにー、」
「―――ん?」
「もしあの人が……詩音さんが正しい道を歩いていたら、
私も詩音さんと仲良くなれましたかしら?」
「――うん、きっとなれたさ。」
「私の、ねーねーになってくれてたかもしれないんですのね。
…あの人のこと、好きなんですのね。……ちょっとだけ妬けますわ。」
「………むぅ。」
ふふ、にーにー、変わってない……。
「………私はここで待ってますから、今は詩音さんのところへ。」
「ありがとう。…それじゃあ、行ってくる。必ず、戻るから。」










彼女は、落下していた。
その罪を悔い、地獄へと堕ちてゆく。
人のいるこの世界へ、……「僕」へ、別れを告げて。

じゃあね。
大好き。

「…むぅ。」

え?










「………あ、にーにー!お帰りなさい。」
「………ただいま、沙都子。」
「にーにー、お顔が赤いですわよ?」
「………むぅ。」








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