最期の贈り物。


「悟史くん……………、……悟史くん…………。」
この子は僕を悟史だと思い込んでる。
なにもできない僕にできることはそれぐらいだから。
だからこの傷付いた可哀想な子の話を聞こうと思った。
たとえ思い込みだとしても、僕の存在がこの子の励みになるのならそれでいい。
淡い恋。切ない想い。焦がれる心。
気持ちは痛いほどにわかる、だけど。
僕に気付いちゃいけない。
僕を忘れなきゃいけない。
このままじゃ、ダメになる。
部屋を出て、新鮮な空気を吸って、人と交流して。
今ならまだ大丈夫だから。
だから、今度こそは――。

……でも、やっぱりダメだった。
圭一が人形をレナに渡した。
そして詩音の鬼が再び目覚め始める。

こうなってしまったらこの子はもうダメ。
近いうちに梨花も拷問か自死か、どちらにしても長くない――。

祭具殿で鷹野の話を聞くのは、何度繰り返しても嫌だった。
僕の反応に、僕が悟史でないことにも気付いてしまった。
この音が聞こえるのなら、やっぱりもう……。

――梨花が死に、沙都子が死んだ。
魅音も死に、圭一も傷付き、そしてこの娘も壊れた。

この子は――とても愚かだけれど純粋だった。
ただ寂しいだけだった。
罪は罪。だけど僕はこの子を嫌いじゃなかったのですよ。

梨花が死んだのだから僕もここから消えないといけないのだけど、
でももう少しだけ。
せめてこの子に、最期の夢を――。




じゃあね。
大好き。

「…むぅ。」




――僕の声が、ちゃんと届いてくれますように。







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